Odooの日本向けローカリゼーションが動きだしました

日本語化だけではありません
2018年4月17日 by
Odooの日本向けローカリゼーションが動きだしました
Yoshi Tashiro (QRTL)

私たちQuartileはオープンソース志向のOdooパートナーということで、かねてよりオープンソースのERPであるOdooの日本語化作業に積極的に取り組んできていましたが、これまでそちらに時間を取られがちで、日本商習慣対応等、他のローカライズ作業があまりできていませんでした。

Odoo V11の日本語化は未だ完成形ではないものの、現在当社がサポートしているお客様の導入範囲においてはおおよそ問題ない状況になっているため、最近コミュニティ活動のフォーカスを日本向けローカリゼーション機能作成に移しています(日本語化も継続してサポートしています)。ということで、以下、活動状況や考え方など。

日本向けローカリゼーションレポジトリを作成


OCA傘下での活動です

日本向けローカリゼーション機能は、日本のユーザにOdooサービスを提供する事業者およびユーザが協力して作成、メンテナンスしていくに越したことはありません。機能が必要になった人がバラバラに開発していたのでは、膨大な無駄が発生し、その無駄は結局ユーザコスト負担として転嫁されます。

ですので、まずはその活動を集約するためのハコ(GitHubレポジトリ)を、先月準備しました。 Odooのコミュニティ活動は極力OCAに集約すべきと考えますので、このレポジトリも当然OCA下に作成しています。

Japanese Localization for Odoo: https://github.com/OCA/l10n-japan/tree/12.0

運営方針は?


まだ試行錯誤です

とりあえず言い出しっぺの当社のメンバ(私、Tim)がメンテナーとなっています。OCA管理のレポジトリは、品質担保のため総じてコードレビューやテストについての方針が厳格に適用されているのですが、基本的に運用方針はメンテナーに委ねられるため、これから試行錯誤しつつ固めていく必要があると思っています。今のところOCAの標準的なコーディングスタイルチェックをかけているものの、単体テストやレビューについての明確な規程は設けていません。

また、言葉の問題もあります。現在活動に参加しているメンバーは英語でのコミュニケーションに問題ないため、これまでのところ英語でやりとりしていますが、ローカリゼーションのレポジトリという性格上、英語のみにしてしまうのも参加意欲を削いでしまってよいくないのだろうなと思います。日本語ができないプレイヤーとの連携を考えると、原則英語としつつ、日本語でのコメントもOKとするのが妥当なのだろうと考えています。参考:https://www.facebook.com/groups/openerpjapan/permalink/1842841109101992/

当面は最新安定バージョン(V11)の機能を作成していますが、当社は基本的にはお客様のニーズ起点で活動しますので、V10の機能を作成することも有りえます。

どういう機能があるの?


日本でのOdoo使用で、ないと困るものを作っていきます

日本でOdooを標準機能のまま使用すると、どういうところが足りていないと感じるでしょうか?

  • 顧客や仕入先等管理する取引先マスタの住所項目の並びが外国仕様

  • 県名データが日本語になっていない

  • ECサイトでお客様が住所入力する画面の項目並びも外国仕様

  • 見積書、請求書、注文書等のPDF印刷で取引先名の後に「様」や「御中」と出ない

  • 「20日締翌月20日払」のような支払条件での売掛金/買掛金期日提案ができない

  • 月締請求書が出せない


他にも業界によりいろいろあると思います。今のところ、取引先マスタの住所項目並びを日本仕様にするモジュールと、都道府県名を日本語化するモジュールを、当社主導で作成しています。

日本で汎用的に使える機能の作成を依頼したら課金されるの?


されます ^^

当社にご依頼いただいた場合の話です。 汎用的なユースケースを念頭に機能を作成するには、それなりにデザインを練り、テストをしっかり行っていく必要があり、どうしてもコストがかかります。ですのでお客様からの費用面でのサポートは不可欠です。

とはいえ、私たちには、「日本での汎用的なニーズに対応する機能については、お客様のご負担は極力小さくしたい」という思いがあります。ですので、汎用的な機能を作成する際には、実績ベースで、当社で30%~70%ほどコスト負担してきています。負担割合について明確な指標があるわけではありませんが、汎用性の度合、作業スケジュールの自由度等に応じて、リーズナブルな負担配分を提案します。

それでも、「他社がタダで使える機能を作るのに自分がコスト負担するのは納得がいかない」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。そう思われる方にはぜひ、どれだけのオープンソースのOdoo機能(Odoo本体およびコミュニティ機能)が、先人のコスト負担により無償で使えるようになっているか、ということにも考えを巡らせていただければと思います。そこをご理解いただき、オープンソース活動をサポートしてくださるお客様に頭があがりません。

日本向けローカリゼーション活動にご参加ください


オープンソース志向のサービス事業者は是非!

Odooの日本語化作業においても、広く周りの事業者やコミュニティに活動参加を呼びかけてきましたが、日本向け機能作成についても同じく参加を募りたいと思います。

私のこれまでの経験上、日本ではこのような呼びかけに応える人は非常に少なく、いわゆるフリーライダーとしてコミュニティの成果物を消費するという姿勢の事業者がほとんどです。日本では諸般の事情により、残念ながらオープンソースのカルチャーが育ってこなかったということなのだと思いますが、なるべく私からも情報発信してオープンソースのメリットも認識していただいた上で、しつこく(?)活動に参加いただけるよう呼びかけていきたいと思います。


オープンソース活動のメリット:

  • コストが抑えられる(コミュニティでの負荷分散、既に存在する機能の作成回避)

  • 技術スキルが向上する(コードレビューする/してもらうことによる気付き)

  • 社外の人々と交流できる(私やTimなどと仲よくなれますよ)

  • 自社のマーケティングに繋げられる(コミュニティ活動の成果はSNS等で発信しましょう。そこから商談が発生することも)


逆にこういうメリットを蔑ろにして、プロプライエタリ志向に閉じてしまうのは、これからは客観的には技術がないか、情報の囲い込みをしたいかのどちらかだと判断されるようになっていくのではないでしょうか?



関連記事:Odooの歩き方 2018年版(オープンソースを活用して効率よくOdooを導入するコツ)

Odooの日本向けローカリゼーションが動きだしました
Yoshi Tashiro (QRTL) 2018年4月17日
このポストをシェア
アーカイブ