2月7日のFukuoka Integration Xのオンラインイベントで話しました。イベント登壇資料はこちらに掲載しています。日本でのOdooへの興味の高まりを反映してか、声をかけられて外部のオンラインイベントに登壇したのがこの半年で3度目でした。
私がイベントで話すときのメッセージの中心はだいたい決まって「オープンソース活動を推奨すること」です。実態としてほとんどのビジネスパーソンに馴染みのない話ですのでいつも背景等の説明で時間をとってしまうのですが、それだけだとOSS活動により何が良くなっているのかがよくわかりませんので、今回はOdooを日本で使うにあたり直面しがちな課題につき、OSSを活用した具体的な解決方法をOdooの操作を交えつつ説明しました。
皆さん、ITサービス事業者のプレゼンテーションで登場する事例って「このソリューションがほしければうちのサービスを契約してくださいね」というものばかりだと思いませんか?まあそうですよね。そうしないとサービス事業者も食いっぱぐれますからね。
ですがコタエルではそのようなプレゼンテーションはしません。オープンソース活動に取り組むプレイヤーの矜持でもあるのですが、OSSプロダクトの課題へのソリューションはオープンな場で作成し、オープンな場で共有すべきです。マーケットニーズに対してプロダクトがまだ発展途上である状況では尚更そうです。
ということで、今回は「標準機能のみのOdooコミュニティ版(16.0)をデモシナリオに沿って操作する中で出てくる具体的な課題に対し、主にOCAモジュールを使用して対処する」というのをやってみました。デモシナリオは、「とある代理店がオフィスチェアの引合を受けて見積書を出し、受注後発注をかけ、入荷して在庫を作成し、出荷して請求する」というもので、その中で帳票の印刷とチャターでのコミュニケーションも合わせて説明しました。ちなみにOdooの最新版(17.0)を使用しなかったのは、OCAモジュールの17.0対応がまだ追いついていなかったためです。
その中で説明したソリューションは以下のとおりです。
No. | 課題 | 対応 |
1 | アドレス項目の並びが海外仕様 | OCAモジュール l10n_jp_address_layout をインストール |
2 | 都道府県名がアルファベット | OCAモジュール l10n_jp_country_state をインストール |
3 | アドレス手入力の手間を減らしたい | OCAモジュール l10n_jp_partner_zip_address をインストール |
4 | 印刷帳票で顧客アドレスに「日本」が表示される | 国定義調整 |
5 | 印刷帳票で宛名に「御中」がついていない | OCAモジュール l10n_jp_partner_title_qweb をインストール |
6 | 印刷帳票の数量や単価の小数点以下表示をなくす | OCAモジュール report_qweb_decimal_precision をインストール |
7 | 印刷帳票の会社詳細が日本語のみ | OCAモジュール report_company_details_translatable をインストール |
8 | 請求書メールを経理担当者にも送りたい | 標準モジュール base_automation をインストールし自動アクションレコードを追加 |
9 | 会計仕訳を確認したい | 「全会計機能を表示」グループにユーザ追加 |
プレゼンテーションのテーマに「日本のDXを進める」とたいそうなことを掲げましたが、本当の意味でDXを進めるには、ユーザとしてはオープンソースのソリューションを積極的に活用し、サービス事業者としてはオープンソース活動に積極的に取り組むことが、今後より重要になっていくと考えています。私たちのみで「日本のDXを進める」ことはできませんが、皆さまがERP/基幹業務システムの領域でオープンソースにふれるきっかけを提供することはできるはずです。
ここに出しているOCAモジュールはみな、日本でのOdoo利用に際しデフォルトであったほうがよい機能ばかりだと思いますので、皆さまぜひご活用ください。ライセンス費用などかかりませんので使わない手はありません。そしてモジュールを利用する中ででお気づきの点があれば、ぜひOCAのレポジトリでイシューを作成してフィードバックをいただければと思います(とくにOdooサービス事業者の皆さま)。そうすることでOdooをより有効に活用するためのコミュニティ資産が増えていきますので。
ちなみに今回紹介しましたOCAモジュールはすべてコタエルで作成したものです。この記事の作成時点で、残念ながら日本の他のOdooサービス事業者の手になる信頼のおける(=OCAに追加されている)オープンソース機能は存在していません。次回のこのような機会では、他事業者のコミュニティモジュールが紹介できるようになっているとよいなと思います。そうなったときに日本のDXが少し進み始めるのではないかと楽しみにしております。
課題の解決が好きな方
OSSを活用して企業のDXを本質的に進めたい方、
コタエルでやってみませんか?
Fukuoka Integration Xのオンラインイベントに登壇しました