Odooの価格改定の影響についての考察

2023年3月26日 by
Odooの価格改定の影響についての考察
Yoshi Tashiro (QRTL)

Odooの料金プランが改定されました の記事でお伝えした料金改定がOdooのビジネスにどのような影響を与えたのか、今後どういう動きがあるのか(あるべきなのか)についての簡単な考察です。

価格改定により起こったこと


おさらいですが、2022年10月の料金改定では、以前はユーザ数と使用するアプリに応じた課金となっていたのが、ユーザ数に応じた課金のみに一本化(ユーザあたりの課金単価はアップ)されました。この改定は、端的に言うと以前と比べて小規模事業者(=ユーザ数が少ない)に有利なものでした。


この料金改定の影響、Googleトレンドからははっきりとしたものは読み取れませんが、しばらく前からのOdooの勢いがそのまま継続し、他プレイヤーとの差は拡がってきているようです。間口が広がったことでOdooにつき検索する人が増えたことは想像に難くなく、直近のトレンドの少なくない部分は新規ユーザによるものなのだと思います。


Googleトレンド


Odooが着実にユーザを増やす一方で、パートナー界隈、特にコミュニティで積極的に情報発信をする人たち(そうでない人たちとあまり接点がないからでもありますが)からは、このごろOdoo社のヘルプデスクのサービス品質の低下を懸念する声がよく聞こえてきます。私たちの実感としても、明確なUI上の不具合である場合等を除き、Odoo社のヘルプデスクに問題を指摘したときに、なかなか話が通じない状況は多いです。


これも想像するにOdoo社のヘルプデスク要員が新規の小規模事業者のユーザサポートに追われててんやわんやになっているのではないかと考えられます。特に小規模事業者だとユーザのITリテラシーも十分でないケースもありそうですし。


以前はOdooエンタープライズ利用者向けのヘルプデスクとは別に、GitHubでのイシュー対処にOdoo社のメンバーもよく取り組みそれなりに機能していたのですが、昨今はGitHubのチャネルが蔑ろにされている感があるのは否めません。(このことはオープンな場で協働しプロダクトを改善したいと考える私たちにとっては大変残念なことです。)この傾向が続くようであれば、Odoo社としてユーザ向けとパートナー向けのヘルプデスクチャネルを分ける等の施策をとってほしいと切に願います。私たちプロが認識する課題は設計上のものも多く、操作方法や設定方法の説明がメインのヘルプデスクスタッフには対処しきれないのです。

これからどうなるのか(どうするのか)


Odoo社のヘルプデスクの構造的な課題はさておき、小規模事業者に間口を広げたOdooが進むべき方向性として、「プロダクトをよりわかりやすくする」というのは以前に比べてもより鮮明になったのではないかと思います。そうしないとサポートがパンクしてままならなくなってしまいますし。


そんな中これから浮き彫りになってくるのは、「じゃあローカライズどうするよ?」ということではないでしょうか。いくらベルギーのユーザがストレスなく利用できるシステムになったからといって、それがそのまま日本のユーザにすんなり受け入れられるわけではありません。まず言語面での対応(翻訳)が必要ですし、日本の制度や商習慣に沿った調整も必要です。ローカライズは以前から課題ではあるのですが、新価格体系になりOdoo社でその重要度が改めて認識されているはずです。ここがボトルネックになるので。


言語面の対応含めプロダクトのローカリゼーションに関してはコタエルで進めているところもありますが、ユーザ向けの各種ドキュメントの日本語化については私たちでどうにかするのは現実的ではありません。おそらくここはOdoo社がテコ入れしてローカリゼーションに本腰をいれないと(それができる体制を作らないと)、Odoo社が直接日本のユーザにSaaSでサービス提供するのは難しいのだろうなと思います。私たちからもOdoo社に対してできるサポートはしていきたいと思いますが、Odoo社側でそのあたりの戦略を描いてうまくパートナーを巻き込んでいけるのか、傍から見ているとちょっともどかしい気はします。


幸いOdooのコアはオープンソースで、Odoo本体で足りないところはOdoo Community Association (OCA) の活動を通じて補完していくことができます。私たちは私たちで、Transifexでの翻訳やOdooのGitHubレポジトリでのイシュー/PR作成のほか、OCAでの活動にも積極的に取り組み、私たちがコントロールできるところでコミュニティ資産を積み上げていきたいと考えています。


Photo by AbsolutVision on Unsplash

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Yoshi Tashiro (QRTL) 2023年3月26日
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