Odoo(オドゥー)とは
世界で圧倒的な人気を誇る、オープンソースの業務アプリケーションスイートです。
Odoo(旧称OpenERP)はベルギーのOdoo S.A.社が開発している、世界で最も人気のあるオープンソースの業務アプリケーションスイートです。
機能を豊富に備え、操作性、拡張性、保守性の各面で優れており、圧倒的なコストパフォーマンスを誇ります。カバー領域は、従来のERPパッケージ守備範囲を越え、CMS、eコマース、イベント管理、ヘルプデスク等、多岐にわたります。多通貨・多言語をサポートするため、日本だけでなく、海外拠点での利用にも適しています。
Odooはデータベースサーバ(PostgreSQL)、アプリケーションサーバ(開発言語はPython)、ウェブクライアント(JavaScript)で構成されます。ユーザはパソコンに特別なソフトウェアをインストールする必要がなく、普段使っているウェブブラウザからOdooを操作することができます。
利用形態は、クラウド(Odoo社の SaaSや、 その他事業者のクラウドサービスなど利用)とオンプレミスの何れにも対応可能です。
世界中に多数の導入企業・ユーザ(2023年7月時点で1,080万の課金ユーザ)を抱え、導入・運用をサポートするサービス事業者が各地に存在します(2023年8月時点のOdoo社公式パートナーのみで2,000社以上)。
一部のサービス事業者はオープンソース活動(コミュニティベースでのバグ修正、機能追加、ローカリゼーション)に取り組んでおり、Odooのエコシステムはこれらコントリビュータにより下支えされています。
よくある商用ERP
- ライセンス費用が高い
- 拡張性が低い
- オープンソース機能がない
- ベンダーロックインされやすい
Odoo
- ライセンス費用が不要(CE)または安価(EE)
- 拡張性が高い
- オープンソース機能が豊富
- ロックインへの自己防衛が可能
プロダクト思想
圧倒的なモジュラリティと高速な進化
SAP等多くのERPプロダクトがあらゆる業務パターンを盛り込みパラメタ設定で構築を進めるスタイルであるのに対し、Odooでは拡張(モジュール追加)することにより要求を実現します。
Odooのモジュラリティは非常に高く、モデル・項目定義、業務ロジック、ビュー、その他データのほとんど全てがカスタマイズにより拡張可能です。そのためコア(標準機能)がシンプルにとどめられており、個別ニーズへの対応方法のバリエーションが多岐にわたります。
そのようなプロダクトの特徴もあり、Odoo社としてもこれまでのところどちらかというとデータの堅牢性よりも業務間の連携や操作性を、プロダクトの安定化よりもスピーディな進化を重視してきています。そのため毎年新バージョンのリリースのたびに革新的な改善が施される一方、リリース後しばらくの間はバグが出やすいといった面もあります。
Odooで提供される機能
これらの機能がすべてOdoo上で統合可能です。
Odooはあらゆる業務領域をカバーしています。そのため、特定の業務領域に特化したシステムや単一機能のSaaSを個別に導入した結果データの統合が困難になった状況に、有効な解を提供します。
マーケティング
マーケティングオートメーション / メールマーケティング / SMSマーケティング / ソーシャルマーケティング / イベント / アンケート調査
サービス
プロジェクト プロジェクト / タイムシート / フィールドサービス / ヘルプデスク / プランニング / 予約管理
生産性向上
ディスカス / 承認ワークフロー / IoT / VoIP / ナレッジベース
カスタマイズ
スタジオ
Odoo(17.0企業版)のお試しはこちら
右の「デモ環境を見てみる」からデモ環境に移動後、画面右上の [サインイン] より、
Eメール(ユーザ)欄:demo、パスワード欄:demo でログインしてください。
※アプリや機能は一部のみインストールしています。お試しされたい機能がございましたらお問い合わせください。
Odooエディション
コミュニティ版と企業版があります。
Odooはバージョン9.0より、無料のコミュニティ版と、有料の企業版に分かれています。企業版は、コミュニティ版(オープンソース)+企業版モジュール群(プロプライエタリ)で構成されています(オープンコアモデル)。コミュニティ版は、次のリンク先から取得することができます。
- 夜間ビルドページ: https://nightly.odoo.com/
- GitHubのOdooレポジトリ: https://github.com/odoo/odoo
オープンソースライセンス
コミュニティ版のライセンスはLGPLv3です。
Odooコミュニティ版のライセンスは LGPLv3です。バージョン9.0でエディションがコミュニティ版と企業版に分かれた際に、バージョン8.0を引き継いだコミュニティ版のライセンスが、AGPLv3からLGPLv3に変更されました。
LGPLv3ライセンスは、GPLv3やAGPLv3と互換性があり、プロプライエタリなプログラムも、LGPLv3ライセンスのプログラムに依存することが可能です。
このライセンスの採用により、Odooはオープンコアビジネスモデルに移行するとともに、 アプリマーケットでのプロプライエタリモジュール販売が可能になりました。
たまに「ライセンスフリー」という言葉でOdooが語られている場面を見かけますが、これは適切ではありません。オープンソースのライセンスが適用されていますので、これに則って正しく利用する必要があります。
LGPLv3
- ユーザがソースコードにアクセスできなくてもよい
- プロプライエタリ機能をリンクすることができる
- Odoo本体(CE)で採用
AGPLv3
- ユーザがソースコードにアクセスできなくてはならない
- プロプライエタリ機能をリンクすることができない
- 大多数のOCAモジュールで採用
Odooコミュニティ協会(OCA)
世界最大のオープンソースERPコミュニティです。
Odooコミュニティ協会(OCA)はOdooの補完機能の作成・メンテナンスにおいて、コミュニティ開発者の協働を推進する非営利団体です。Odoo S.A.社がコア機能の発展を牽引するのに対し、OCAはコミュニティメンバーが携わるマーケットのニーズを反映させた補完機能の開発・保守を支えており、Odooエコシステム発展の一翼を担っています。OCA管理下のプログラムには、Open Source Initiativeの認めるオープンソースライセンスの何れかが適用されることになっており、ほとんどのモジュールはAGPLv3またはLGPLv3でリリースされています。
OCAの作業プロセスには、厳格なコードスタイルチェック、レビューステップが組み込まれており、OCAのもとで管理されるモジュールは概して品質が安定しています。2024年10月時点で、V16で2200以上のOCAモジュールが利用可能です。
プロダクトライフサイクル
Odoo社のサポート対象は直近3世代です。
Odoo社によるサポート対象バージョンは、最新のメジャーバージョンおよびその2世代前までです。
お使いのOdooを新しいメジャーバージョンにアップグレードしたいとき、エンタープライズ版をご利用の場合は、Odoo社のデータベース変換サービスが利用可能です。 コミュニティ版をご利用の場合は、コミュニティにてサポートされるOpenUpgradeを使用してのアップグレードを検討するのが現実的です。
オープンコア時代(LGPL + 企業版機能群)
バージョン | 主な改善点/変更点 |
Odoo 18.0 (2024-10) | 見積とスプレッドシート(費用見積)の連動、コミッションアプリ追加、MTOルートの柔軟性改善、RFIDでの実地棚卸、ロット/シリアル別原価、仕掛品計上、連結会計を会計アプリに統合、ブラウザからの画面印刷(Ctrl+P)、バックエンド画面のURLパンくず化、jsonデータ表示 |
Odoo 17.0 (2023-11) |
UI刷新(色調、アイコン、各要素位置・サイズ見直し)、PoS機能大幅拡張、会議室予約機能追加、WhatsApp連携、ChatGPTによるテキスト生成サポート
|
Odoo 16.0 (2022-10) |
UI刷新(保存ボタン撤廃)、ナレッジアプリ追加、ダッシュボード機能刷新、大幅なパフォーマンス改善等、Odooエンタープライズ価格改定(ユーザ課金に一本化)
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Odoo 15.0 (2021-10) | ウェブサイトビルダー(CMS)を中心に基本機能の改善等 |
Odoo 14.0 (2020-10) | ウェブサイトビルダー(CMS)機能刷新、スプレッドシート機能追加等 |
Odoo 13.0 (2019-10) | フィールドサービスアプリ追加、レンタルアプリ追加、eラーニングデザイン刷新、請求書を仕訳に統合 |
Odoo 12.0 (2018-10) | マルチウェブサイト対応等 |
Odoo 11.0 (2017-10) | 原価計算法切替(個別原価→FIFO)、スタジオリファクタ、Python3対応 |
Odoo 10.0 (2016-10) | 生産管理機能リファクタ |
Odoo 9.0 (2015-10) | 会計管理機能リファクタ、コミュニティ版と企業版分離 |
完全オープンソース時代(AGPL/GPL)
バージョン | 主な改善点/変更点 |
Odoo 8.0 (2014-09) | 在庫管理機能リファクタ、ウェブサイトビルダー(CMS)追加、eコマース機能追加、POS機能追加 |
OpenERP 7.0 (2012-12) | ウェブクライアント改善 |
OpenERP 6.1 (2012-02) | GTKクライアント開発停止 |
OpenERP 6.0 (2011-01) | ウェブクライアント追加 |
OpenERP 5.0 (2009-04) | |
TinyERP 4.0 (2006-12) | |
TinyERP 3.0 (2005-09) | |
TinyERP 2.0 (2005-05) | |
TinyERP 1.0 (2005-02) | 初版リリース |
エディション(CE/EE)の選択
迷うならコミュニティ版(CE)を試しましょう。
判断軸としては、「必要な機能があるか」「Odoo社のサポートが必要か」に行き着きます。判断がつかない場合は、とりあえずコミュニティ版を試してみて、それで足りないようであれば企業版への切替を検討するとよいです。(後ほど切り替えることも可能です。)
必要な機能があるか
Odooを導入したい業務範囲に対応する機能があるかを見ましょう。
導入スコープに、例えば「会計」「マーケティング自動化」「IoT」等の領域も含まれる場合は、企業版を検討するとよいでしょう。一方、「販売」「購買」「在庫」といった領域が導入スコープであれば、機能面に関してはコミュニティ版で事足りるケースもよくあります。
Odoo社のサポートが必要か
製造元による不具合修正保証やバージョンアップサポート(DB移行スクリプトの使用)を重視する場合は、企業版を選択するのが妥当です。自社でOdooの技術面に精通した担当者を抱えていたり、信頼できるサービスパートナーのサポートが得られる場合は、前提/制約を理解したうえでコミュニティ版を使用するのもよいでしょう。コミュニティ版
- 完全オープンソース(LGPL-3)
- ライセンス費用不要
- 企業版機能(会計アプリ等)が使えない
- Odoo社によるバグ修正保証なし
- Odoo社のバージョンアップスクリプトが使えない
企業版
- オープンソース(LGPL-3)+プロプライエタリ
- ライセンス費用がかかる Odoo社ウェブサイトで価格を見る
- 企業版機能(会計アプリ等)が使える
- Odoo社によるバグ修正保証あり
- Odoo社のバージョンアップスクリプトが使える
バージョン(最新/過去)の選択
それぞれのメリット・デメリットを理解して決めましょう。
Odooはバージョンが進むごとに処理速度や操作性が向上していますので、その意味では最新バージョンが有利です。また、製品のライフサイクルの観点でも、言うまでもなく、新しいバージョンの方がサポートされる期間が長いため望ましいです。
一方、過去バージョンではOdoo本体の不具合が比較的出にくく、OCAモジュールがある程度揃っているという利点があります。
標準機能の充実度を優先し、足りないところは多少時間とコストをかけて機能作成する(コミュニティ機能を最新バージョンに対応させる)ことでもよい場合は最新バージョンとし、標準機能で対応できない課題がでたときに、既存のコミュニティ機能を活用して低コスト/短期間での実装を優先する場合は過去バージョン(1つ古いもの)とするのがよいでしょう。
最新バージョン
- Odoo本体の最新機能が使える
- 処理速度/操作性が高い
- Odoo社の更新対象としての残存期間が3年以下
- Odoo本体の不具合が出がち
- 利用できるOCAのコミュニティ機能が少ない
過去バージョン
- Odoo本体の最新機能が使えない
- 処理速度/操作性が最新版に比べると劣る
- Odoo社の更新対象としての残存期間が2年以下
- Odoo本体の不具合が出にくい
- 利用できるOCAのコミュニティ機能が多い
Odoo社のパートナー制度
主にライセンス販売実績をもとに評価します。
Odoo社のパートナー制度は、Odoo社がOdooおよび現地事情に精通した事業者との協働を通じて、世界の各マーケットへのOdoo普及推進を目的に運営されています。Odooを導入・運用には専門的な知見が必要であるため、多くの場合ユーザ企業単独でのOdoo導入は現実的ではなく、Odooに習熟したパートナーのサポートを受けるのが現実的です。
Odooパートナーは公式パートナーとラーニングパートナーに分かれ、2023年4月時点で、世界に1966社の公式パートナーが存在します。Odooオンライン(Odoo社のSaaS)以外でOdoo企業版を利用するにはOdoo社のパートナーを介してコードを提供してもらう必要があります。
公式パートナーは一定のKPI(Odoo企業版ユーザの新規獲得数や顧客維持率)を満たす必要があり、ラーニングパートナーにはそれがありません。公式パートナーには「レディー」「シルバー」「ゴールド」のレベルがあり、パートナーはグレードまたはレベルに応じたサービスをOdoo社より受けることができます。
ただし現状公式パートナーのレベル判定のKPIは、比較的短期間(1年間)でのOdoo社収益への貢献評価の要素が強く、必ずしもユーザ視点でパートナーのサービス品質を適正に示すものとはなっていません。サービス品質が低くとも、大口顧客1社に企業版を導入する機会があるとゴールドパートナーになれますし、逆にサービス品質が高くとも、企業版の新規ユーザ獲得がないとラーニングパートナーに格下げされます。オープンソース活動を通じて価値提供するスタイルの事業者にとっては相性の悪いKPI設定となっています。
Odooの知見に乏しくとも公式パートナーとなる事業者もいれば、Odooを熟知しているけれどもそれがゆえにOdoo社のサポートを必要とせず、あえてラーニングパートナーにとどまる(ラーニングパートナーの方が安価であるため)、またはパートナーとはならないことを選択する事業者も存在します。また、パートナーの中には企業版のみサポートするスタンスをとっている事業者もあります。